2012年11月のBBCの記事「Warning to cut TV for young children」より意訳、引用。
英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルに「Time for a view on screen time」という論文を書いたAric Sigman博士は、スクリーンが子どもの脳のドーパミンレベルが増加させてしまうと警告する。
彼はこれが子ども達が成長した時のスクリーンメディアへの依存につながると指摘する。幼い子どもの脳の画面メディアの影響に関する決定的な実証は今のところ存在しないため、今後より多くの研究が求められている。幼少期はいかなるデジタルスクリーンも見るべきではないという関心も、世界中で拡がっている。
アメリカの小児ガイドラインでは、より多くの研究が進むまで2歳未満の子どもにはいかなるスクリーンも露出させないように勧めている。アメリカで子どもの肥満撲滅運動をするミシェルオバマ大統領夫人もまた、幼児がスクリーンを見ることを減らすよう勧めている。彼女は、子どもがスクリーンを見る時間を制限すること、2歳未満の子どもには一切排除することが重要だと語る。これには多くの親たちがショックを受けることだろう。フランスはすでに3歳未満の子供に向けた地上デジタル放送を禁止しており、オーストラリアとカナダもこれに似た推奨事項とガイドラインを作成している。
テレビドーパミン
「幼い頃からスクリーンを見ると、その後人生も同じようにスクリーンを見て過ごすことになるでしょう。」
子どもたちが画面を見て過ごす時間について、Aric Sigman博士は語る。
「若い頃にスクリーンを見た人々は、その後もずっとそれが習慣として続いていくようです。これが何に関与しているかというと、ドーパミンという化学物質です。ドーパミンは私たちが何か興味を引くものや新しいものを見る時に生成されますが、副次的な作用も持っているのです。ドーパミンはほとんどの中毒において神経科学的に関与しているのです。」
「例えば、コンピュータゲームは子どもの脳内の神経回路を変え、子ども達は更にスクリーンメディアに依存するようになる。このような長年に渡り毎日のように生成されているドーパミンは神経科学者の間での懸念となっています。」
コンピューターやテレビが最初に家庭用品になった頃は、小さな子ども向けのコンテンツはほとんどなかった。今や幼児がスクリーンを見るのはごく当たり前のことになっていて、アメリカの子ども達のの90%以上は2歳以前に定期的にテレビを見るようになると推定されている。
オックスフォード大学のバロネス・スーザン・グリーンフィールド生理薬学教授は、神経伝達ドーパミンが脳細胞の大きなグループにどのように影響するのかを調べるため、ラットの脳の実験を行なってきた。
「現在、我々はドーパミンについてとても多くのことが分かっています。ドーパミンは脳内で多くの役割を持っています。どういうわけか、それは覚醒や中毒、そして脳の全体を変え得るとても微妙な形で関係しているのです。現在、ビデオゲームをすることはこの仕組に入り込んでいるとも考えられています。ビデオゲーム中毒者はドーパミンに関連する脳の領域が非常に発達している事を示した研究がありました。ギャンブル中毒者と非常に似ているのです。」
Sigman博士は子ども向けのプログラムを作っている人々は、子どもの興味を惹き続ける方法をよく分かっていると考えている。
「開発者たちはそれをよく知っているとしても、ドーパミンのことなどは知らない。しかし彼らは漫画やプログラムに沢山の刺激を入れれば入れるほど、子どもたちをより強く惹きつけることを知っています。子どもに沢山の新しい刺激を与えることは、子どもの脳により強いドーパミンを生成させる。そして子どもはドーパミンの更なる欲求を満たすためスクリーンを見つめる時間をもっともっとと欲し続けます。これは現時点では推論であるが、この推論が正しいと考えられる多くの理由が存在するでしょう。」
ドーパミンは注意力と中毒性に不可欠である。そしてSigman教授は幼い子どもがスクリーンを見ることはドーパミンを過剰に生成させ、その後の生活において依存や注意力欠如を引き起こすと推測している。
幼い子ども向けの番組は可能な限りカットや編集を無くした方がよいだろう。その点では、Watch with Mother(イギリスの古い子ども番組)やそれに似た1950年代の番組はおおよそ正しい考えを持っていたのかもしれない。
一緒に見ることで利点を見出すこともできる
しかし親とテレビを見る形態によっては、利点を見出すこともできる。
新しい形態のデジタルメディアと子どもとの相互作用を研究し、それらが子どもたちの日常や長期的発達に与える影響を調べることを目的とした機関であるChildren’s Digital Media Centreの科学研究者、Yalda T Uhls氏は次のように語る。
「子どもがスクリーンを見る時、もし両親が隣に座り、スクリーンが何かを言った時『幸せそうだね、赤ちゃんが嬉しそうよ』などと言いながら指さすと、子どもはそこから学習することができるのです。それが幼い子どもだとしても。
なぜならそこには社会的な相互作用があるからです。
一定の年齡になれば、スクリーンは学びの機会にもなるのです。子どもが一度でも、スクリーンは世界を客観的に見て取ることができる1つの手段、ということを理解するができればね。
その平面的な2次元画面が現実世界を表示しているということを、子どもたち自身で理解する必要があるのです。それは2歳頃までにこれを理解することは有り得ないので、この場合は学習などしていません。社会的な相互作用がない場合、スクリーンは幼い子どもには何の学習にもならないのです。」
子どもとデジタルスクリーンについての研究については、様々な国が異なった反応を示している。2008年のイギリスでは、子どもが低年齢からテクノロジーやコンピュータスクリーンと触れ合うことを薦めていた。
それ以来そのアドバイス自体は削除されているが、イギリスは現段階では医療面や政府としてのガイドラインは定めていない。
BBCの「CBeebies」はイギリスの幼児向け番組の顕著な事例だ。(日本のNHK教育テレビのようなもの)
研究についてCBeebiesに尋ねてみると、それが幼い子どもたちが見ていることは認識しているが、プログラム自体は2歳以上を対象にしていると述べた。しかし番組のいくつかには、例えば1歳の誕生日を祝うバースデーカードが出てくるような、より幼い年齢に向けたものも見られる。CBeebiesはそれは親や上の兄弟が、小さな赤ちゃんを祝うということだと説明する。
News Corporationによる「BabyTV」では、番組は最大4歳までを対象としている。イギリスの放送ライセンスを付与されているため、EUの放送法は番組をEU諸国が禁止できなくなっているが、フランスでは番組内で子どもへの危険性を表示するように求められている。
スクリーン・ベビーシッター
しかし親の多くは子どもを数分間だけ大人しくさせておくのに、テレビがとても便利だと認めているだろう。
「テレビは確かに便利かもしれませんが、もしテレビをベビーシッターのようにして子どもを長時間テレビを見せている場合、人との社会的相互作用を感じることで学習している子のようにはならない危険性があるでしょう。」と研究者のMs Uhlsは語る。
「洗濯したり料理したりする親をついてまわっているだけの子どもは、テレビの前に座っているだけの子よりも早い年齢で沢山の言葉を学習します。」
しかし幼い子どもを長時間デジタルスクリーンにさらすことのの危険性(あるいは安全性)について決定的な証拠はまだ存在していない。
「我々がしなければならないことは、様々な思索を考え取り入れていくことだろう。」とグリーンフィールド氏は言う。
「調査や傾向は実験ではないが、50年代の人はタバコと肺ガンの関連性が分からなかったが、何かによって何かが起こるということは最後になって分かることだ。」
スクリーンエンターテイメントが幼児に深刻なリスクをもたらすかどうかどうかがはっきりしていないのであれば、政府の保健局や小児科医療機関、専門家からのアドバイスは慎重に、注意深く耳を傾けるようにするべきだろう。
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以上、Warning to cut TV for young children」より意訳、引用。
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