以前、「シリコンバレーのテクノロジストは自分の子どもをコンピュータから遠ざける」という記事をご紹介しましたが、2014年9月10日付けのNYTimesにスティーブ・ジョブズが同じように子どもへのテクノロジー制限をしていたという記事がありました。
以下、「Steve Jobs Was a Low-Tech Parent」より意訳、引用。(見出しは訳者が追加)
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“Steve Jobs Was a Low-Tech Parent”
By Nick Biltonsept / NewYork Times
スティーブ・ジョブズがアップルを率いていた頃、彼は記者を呼び出すことで良く知られていた。新しい記事について記者を褒める事もあったが、多くの場合は記事が間違っている事を指摘した。
私もそのような呼び出しを2.3回受けたことがあったのだが、2010年末にiPadの欠点を記事にした私を呼び出した時の会話ほど衝撃的だったことはない。
私はその記事の内容から話題を切り替えようとしてジョブズ氏に尋ねた。
「ところで、あなたのお子さんはiPadが大好きでしょうね?」
初代iPadが世界中の店舗に並んでいた頃だったからだ。
私の子どもたちはiPadを使ったことはない。
私は子どもがテクノロジーに触れる事を制限しているんだ。
私は意表を突かれて言葉を見失い、黙りこんでしまった。
ジョブズ氏ほどの人物の自宅であれば、壁は巨大なタッチスクリーン、食卓はiPadがタイルのように埋め込まれ、来客にはチョコレートを配るみたいにiPodを配る…。 そんなテクノロジー天国に違いないと想像していたからだ。
ジョブズ氏は言った。
「いや、それとは程遠いね。」
テクノロジー企業CEO達の子育てスタイル
それ以来、私は沢山のテクノロジー企業の幹部やベンチャーキャピタリスト達に会ってきたが、彼らはみな同じような事を言うのだった。彼らは子どもがデジタルスクリーンを見る時間を制限したり、学校がある日の夜は全てのガジェットを禁止したり、週末は時間制限をしたりする。
私はこういった子育てスタイルに戸惑った。
なぜなら、ほとんどの親は子どもをタブレットやスマートフォン、パソコンの光を昼夜構わず浴びることに気を留めないのに、全く真逆のやり方をしているのだから。
しかし、テック系CEO達は私たちが考えもしなかった何かに気がついているようだ。
WIREDの元編集者で3D RoboticsのCEOであるクリス・アンダーソンは、自宅にある全てのデバイスに時間制限やペアレンタルコントロールを設定している。
「子ども達は、テクノロジーに対して親がそんなに独裁すべきでないし心配し過ぎている、と訴えているよ。友達の家ではそんなルールはないってね。」クリスは6歳から17歳の5人の子どものことを語る。
「でも、テクノロジーの危険性は僕が身を持って体験してきたことだ。僕はそれを我が子に起きるのを見たくはないんだ。」
彼が言っている「危険性」とは、ポルノやいじめといった有害なコンテンツに曝されること、そしておそらく最悪なのはデジタルデバイス中毒者になることだ。
そう、まさに今の親世代の人たちのように。
テック系マーケティング企業OutCast AgencyのCEOであるアレックス・コンスタンティンは、5歳になる息子には一切のガジェットを禁止し、10歳と13歳の子には平日夜は30分だけ許可している。
BloggerやTwitter、Mediumの創始者であるエヴァン·ウィリアムズと妻サラは、2人の幼い息子達は、いつでも検索してすぐに読むことが出来るiPadの代わりに沢山の本(もちろんデジタルではない方の本)を持っていると語る。
どのように境界線を引くか
彼らどのようにしてその適切な境界線を設定するのだろうか?
一般的には年齢だ。10歳未満の子どもは中毒性のあることに対し影響されやすいことから、親たちは平日はどんなガジェットに対しても一線を引くようだ。そして週末には30分〜2時間程に限定してタブレットやスマートフォンを許可する。10歳〜14歳の子に対しては平時の夜、宿題をするためだけにパソコンの利用を許可する。
テックメディア系企業のSutherlandGoldグループのCEOレスリー·ゴールドは語る。
「僕たちは子ども達に対し、スクリーンなしで過ごす時間をしっかりと決めています。」
「しかし、子どもの年齢が上がるにつれ、また学校でパソコンが必要になるにつれ、少しづつ許可していく必要があるでしょう。」
10代の子ども達にはSNSを禁止しながら、送信後にメッセージを削除できるSnapchatのようなサービスは許可している親たちもいるようだ。
「このような仕組みがあれば、オンラインに投稿してしまったある一言が、その後の人生に付きまとうという怖さから逃れることができる。」とあるCEOは言う。
共通する1つのルール
テック系ではない(いわゆる普通の)親たちは、8歳だとしてもスマートフォンを買い与えている。一方で、テック系企業で働く親たちは14歳になるまで待つ。そしてやっとスマートフォンを手に入れたとしても通話やテキストメーッセージはできるが、データ通信プランは16歳になってから。
その辺りのルールは様々だが、私が調査した所、テック系の親たちには1つの共通したルールがあるようだ。
「共通ルール:寝室にはデジタルスクリーンがない。」
過度な禁止をすべきではないという考え
テック系の親たちでも、時間によって制限する親もいれば、デジタルスクリーンそのもので何をするのかという部分に注意を払っている親もいる。
アリ氏(iLike創始者、FacebookやDropboxのアドバイザー)はこう語る。
「スクリーンの上でも、YouTubeを見たりゲームしたりする【消費行動】と、何かを作る【創造的行動】は分けて考えるべきです。」
「子どもが絵筆を持ったり、ピアノを弾いたり、物書きをしたりする時間を制限するなんて夢にも思わないのと同様に、コンピューターアートや映像制作、プログラミングをして過ごす時間を制限するなんてばかげています。」と彼は言う。
その他に、あからさまな禁止が裏目に出るとデジタルモンスターを生んでしまうと考える人もいる。
TwitterのCEOであるディックは、10代の子どもたちがリビングルームにいる間は無制限でデジタルガジェットを使ってもよいことにした。彼らは時間制限をし過ぎることは子どもたちに悪影響を与えると考えているのだ。
ディックは言う。
「僕がミシガンの大学にいた時、寮の隣の部屋にある男が住んでいたんだ。彼の部屋にはコカコーラやあらゆる炭酸飲料のケースがいくつも積み上がっていたんだ。」
「後から分かったことだけど、それは彼が幼い頃、彼の両親が炭酸飲料を禁止していたことからの反動だったんだ。もし子どもに一切のガジェットを禁止しているとしたら、将来どんな問題が起きるか考えてみる必要がある。」
スティーブ・ジョブズが大切にしたこと
私はジョブズ氏に、彼の子どもたちはiPadの代わりに何をしているのかを尋ねたことがなかった。それで私はジョブズ氏と家族ぐるみの付き合いで、スティーブ・ジョブズの著者であるウォルター·アイザックソンに連絡を取って尋ねてみることにした。
「スティーブは毎晩決まって、広く長い食卓を囲みながら、本や歴史、様々な事を議論していたよ。」
「そこでは誰もiPadやパソコンを取り出さない。子どもたちはデジタルデバイスに全く興味を持っていないようだったね。」
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以上、「Steve Jobs Was a Low-Tech Parent」より意訳、引用。(見出しは訳者が追加)
TreadSoftly
コメントありがとうございます。
オンライン上に公開しているどなたでも閲覧できるブログですので、共有していただくことは全く問題ありません。ただ本記事は新聞記事を素人個人が翻訳し、紹介しているだけのものですので、内容については十分にチェックして頂ければと思います。
コメントを頂き、私も数年ぶりに読み返してみましたが、今でも全くうなずけるような内容だと感じました。
むしろ、2020年の今の状況から見れば、2014年当時の子どもたちのネット利用率など、かわいいものだったのかもしれません。
でも、古い記事だから今更読んでいては遅いではなく、
「スティーブジョブス氏はデジタルデバイス革命者でありながら、同時に子どもたちへの影響をしっかりと考えていた、またテクノロジーの最先端にいる人たちも10年近く前からこのような考えを持って子育てをしている」
ということを知るだけでも、今の状況を考えるきっかけになるかもしれませんし、なれば良いなと思います。
冨田和子
非常に興味深く読みました。学校で教員をしていますが、保護者にこのことを知らせたいと思いました。こちらの記事を印刷してクラスの保護者会で配布したいのですが、可能でしょうか。お返事をいただけるとありがたいです。