アマゾンのサービスに「Amazonファミリー」というサービスがあるのをご存知でしょうか?子育てする人へ向けた会員サービスで、定期的、長期的に必要になるおむつやお尻拭きを割引価格で、自宅まで送料無料で送ってくれるすぐれものです。
共働きで買い物に行く暇もないほど忙しい人や、Amazonのような便利なネット通販に抵抗のない人であれば、とても価値のあるサービスで年会費分の価値は十分にあると思います。
紙おむつと布おむつ
そんな便利な時代ですが、おむつの中でも紙おむつがいいのか、布おむつがいいのか、ということを考えたことがある方は多いと思います。布おむつにこだわって子育てをされている人もいれば、「布おむつなんて昔のもの。便利で清潔な紙おむつを使わない理由なんてあるの?」という人もいると思います。
我が家では、赤ちゃんは完全に布おむつで育てましたが、子育てをする同年代の友人たちの間では布おむつを見たことがなく、布おむつなんて言葉自体ほとんど聞くことはありませんでした。
なぜ布おむつを使うのか
紙おむつは便利です。汚物もすぐに備え付けのテープでくるりと封印してポイと捨てられるので、臭いも気にならない。赤ちゃんも常におしりサラサラ。
一方、布おむつは汚れるたびに手洗い、洗濯、乾燥。毎日10〜20枚くらいの布おむつがフル回転で、庭の物干しに並びます。単なる布なので、濡れたら早めに交換してあげないと赤ちゃんもとても気持ち悪い。
面倒に見える布おむつですが、僕たちが布おむつで育てた理由はこんな考えがあったからです。
便の感覚を知る
最近の紙おむつはとても良く出来ていて、おしっこをしても何事もなかったように吸収してサラサラになります。うんちをしてもしっかりとキャッチして、隙間から漏れないように完璧なギャザーがついています。
でもこれらは一見「赤ちゃんの為」のようにみえるけど、実は全部親にとって面倒なこと、汚いことを最小化したいだけなのではないかと感じます。
赤ちゃんは最初、自分が便をしたということ、そのいきみ、排出の感覚、そして肌に感じる不快感、この一連の繋がりを知りません。それを実際に繰り返すことによって、便意、排出、排出したという事実を自分で認識するようになり、やがて便意を親に訴えられるようになります。
そして次は自分でトイレに行けるようになる。その完成形が僕達大人と同じようにおもらしせずにトイレに行く、という行動につながっていきます。
紙おむつはその学習過程に必要な情報を奪ってしまうのだと思います。
紙おむつに頼りすぎたことによりトイレトレーニングが進まず、悩む人は少なくありません。おむつをなかなか卒業できない子がいるとしたら、その原因は様々だと思いますが、排便の感覚が分からないというのも1つかもしれません。
我が家の場合、1歳10ヶ月くらいでおむつがとれました。トイレトレーニングの要素は他にもあるので、布おむつだけのおかげではありませんが大きな要因になっていると思います。
トイレトレーニングについてはまた単独記事として取り上げたいと思います。
エコで経済的?
布おむつはエコだからという要素もあると思います。僕は正直な所そういうのはあまり気にしませんが、布おむつは繰り返し使えるのでいいなと思います。
また「おむつ代が結構かかるのよね」という主婦の声を聞いたことがあります。紙おむつがいくらくらいするのか分かりませんが、布おむつは最初に布おむつ20枚程、おむつカバーを最初は3枚程(あとは成長に合わせて大きいサイズを追加)そろえるだけです。
2人目、3人目で使うのはもちろん、使わなくなれば別の時期に子育てをする友人や兄弟に上げることができますし、親である自分が使っていたおむつを母親からもらって世代を超えて使っている友人もいます。
排便という人間のきほん
布おむつは大変です。毎日物干し竿に大量の布おむつが並ぶことになります。
でも、何もかも便利になっていく中で、あえて選択していきたい「必要な手間」というものがあると思います。
養老孟司さんがどこかで書いていました。
日本のトイレが高性能になり、手を汚すことなく、
便を見ることすら無く排便が完了するようになった。でも、自分の便を自分で認識すること。
自分は臭くて汚い便を排出する、単なる生き物であるということを認識することは、とても大切なこと。
人間であること、生きていることを実感するために必要な作業であると。
人間であること、生きていることの実感、というと少し大げさに感じられてしまうかもしれません。しかし、子どもがあっさりと友人や親を傷つけてしまう事件の加害者には、こういう感覚が欠如しているのかもしれないと考えることがあります。
生きていれば、生きていることを実感する場面は沢山あります。
でも、自分の便ほど身近に、それを教えてくれるものはありません。
紙おむつはダメ、布おむつなら素敵、ということではありませんが、最初に紹介したアマゾンのような便利なサービスが「当たり前」として定着していくことで、こんな議論は最初っから消えて行ってしまうのかもしれません。
子育ては、僕たちが大人になって改めてそういうことを感じさせてくれる絶好の機会。
布おむつを使ってみることは、親にとっても沢山の学びがあると思います。